悲しむことの出来る強さ、前を向ける強さ

先日、ばあちゃんが亡くなった。小さい頃から毎年長期の休みの度にばあちゃんの家に行って遊ぶのが決まりごとになっていた。俺たち家族の前ではいつでも優しくて、理想的な祖母だったばあちゃん。大好きだったばあちゃん。……ある日突然に死んだと聞かされて。

身内が死ぬってのは悲しいことだと思ってた。ましてやガキの頃から一番なついてたばあちゃんだ。涙くらい流れるものだと思ってた。だけど、実際にソレを聞かされたとき、涙どころか悲しいって気持ちすら湧いてこなかった。ともかく、現実感が無さすぎて。両親はすぐに車で向かったけど、俺は受験生の弟のご飯作ったりしなきゃならなかったし、自分自身大学はサボれないから行けなかった。

通夜も葬式も出ることが出来ず、ただただ普段どおりの日常が流れていく。ばあちゃんが家に一緒に住んでいたならまた話も違ったかもしれない。けど、ばあちゃんは車で4時間走った先にいる。普段は交流が無いだけに、当たり前の日常に変化はほとんど無かった。ただ、炊事・洗濯・掃除がプラスされて少し忙しくなったくらい。

そして、初七日が土日だったのでようやく会いに行くことが出来た。……それでも、やっぱり現実感が無かった。お経を読まれているときも、お墓に納骨するときも。何も考えられないでただ呆然としていただけ。悲しむことは、出来なかった。その後の食事会で、仏壇の前で酒を飲んで笑って。


……その日の夜。ばあちゃんのパソコンの中をいろいろ調べてみた。何やらばあちゃんが残した文章がいろいろと入っていると聞いていたからだ。そして、最初に見つけた文章が、コレ。

千の風になって

私のお墓の前で泣かないで下さい
そこに私はいません
私は死んでなんかいません
千の風に、千の風になって吹き渡っています

私のお墓の前で泣かないで下さい
私は光になって、畑に降り注ぎ
冬はダイヤのようにきらめく雪になり
朝は鳥になって、貴女を起こします
夜は星になって貴女を見守る

私のお墓の前で泣かないで下さい
そこに私はいません、死んでなんかいません
千の風に、千の風になって
あの大きな空を吹き渡っています。

この詩自体は知っていた。911事件の時の追悼式にも詠まれた、あまりにも有名な詩。ばあちゃんがこの詩にどんな気持ちを込めたかったのか。ソレを考えていると、後ろからイトコが教えてくれた。

「この詩ね、ママ(ばあちゃん)が亡くなる直前に近くにあった紙に殴り書きしてあったんだよ。ところどころ省略されてて、ともかく急いで書いたみたい。そんな風に死ねるってのもカッコいいよね、って話してたんだ。」

ばあちゃんは一人暮らしだった。いつかこうなることも覚悟していたのかもしれない。死ぬ直前にこういう詩を書くってことも、前々から考えていたのかもしれない。これが、ばあちゃんが最後に伝えたかった、言葉。

これを聞いて初めて、ばあちゃんの死を受け止めることが出来た。残された他の文章を読み漁って、初めてばあちゃんの気持ちを目の当たりにして、涙こそ流れなかったけど、心から悲しむことが出来た。悲しめる、ってことは悲しみの原因を理屈じゃなくて心で理解するってことだと思う。ばあちゃんの死に正面から向かい合って初めて、悲しいっていう感情が浮かんできた。

それと同時に、引きずってはいられない、前を向こう、とも思った。親父はこういう。

「ババは40までの人生はともかく苦労した人だった。けれど、それ以降の半生をあれほど好きなことやって自由に生きた人もいない。だから、悲しむんじゃなくて、それを受け継いで自分も精一杯生きればいいんだ。」

そのとおりだと思う。ばあちゃんは油絵、絵葉書、パソコン、踊り、仕事などなど、ともかく自分のしたいことを何でもやってきた人だった。地元じゃ町長に立候補すれば当選確実って言われてるくらい、誰もが知っていて誰にでも好かれて頼りにされていた人だった。ともかく、すごい人だった。ばあちゃんは、ともかく自分の人生をこれ以上無いってくらいまっとう出来た人なんだと思う。

だからこそ、こういうスゴイばあちゃんを持った俺は、前を向いて精一杯生きるべきなんだと思う。そして、ああいう詩を残したばあちゃんも、残された俺たちにソレを望んでいるんだと思う。


Today's Background Music Album
  ●Incubus 「Light Grenades」
  ↑もう離れられませんよ。何回聞いただろ?ともかくヘヴィーローテで聞きまくり中。

[ 2006/12/06 17:34 | NetaNote | comment(0) | trackback(0) ]

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